2007年12月 第13回定例会 一般質問
【質問項目】
1.障害者への情報提供について
2.若年就業支援施策の進捗について
3.免許外教科担任について
1.障害者への情報提供について
【質問】まず、障害者への情報提供についてお伺いしてまいります。
2006年の4月から、障害者自立支援法が施行されました。障害者自立支援法は、障害者の地域生活と就労を進め、自立を支援する観点から、障害者基本法の基本理念にのっとり、これまで障害種別ごとに異なる法律に基づいて自立支援の観点から提供されてきた福祉サービス、公的負担医療などについて、共通の制度のもとで一元的に提供する仕組みとして創設されました。障害者自立支援法のねらいは5点あり、1点目は、市町村にサービス提供主体を一元化すること、2点目として、一般就労へ移行することを目的とした事業を創設するなど、働ける社会の実現、3点目は、市町村が地域の実情に応じて地域の限られた社会資源活用のための規制緩和、4点目は、利用に関する手続や基準について透明化・明確化、5点目は、障害者が利用したサービスの量や所得に応じた公平な負担と国の財政責任の明確化です。この背景には、増大する福祉サービス等の費用を皆で負担し、持続可能な制度とすることにあります。そのような制度の変更の中で、障害者小規模作業所では混乱が続いています。障害者小規模作業所は、障害があるため社会的に自立が困難な人に対して、自宅から通所可能な場所で日常生活訓練、軽作業などを行うことで障害者の自立を図ることを目的として運営が行われています。障害者の生きがいを高め、社会復帰及び社会参加を促進する意義を持った施設として、現在まで広がってきています。小規模作業所は、口コミや養護学校に紹介を受けたり障害福祉課に相談して探すことになります。しかし、障害福祉課には市内の作業所リストがあるのみで、そのリストには障害区分、名称、郵便番号、住所、電話番号、運営主体しか掲載されていません。そして、そのリストをもとに障害者は電話をしたり、実際に訪問しているのが現状です。すべての作業所がパンフレットやホームページを持っているわけではありませんので、このリストが唯一障害者と作業所をつなぐ情報と言っても過言ではありません。
そのような中で、情報が名称や住所、電話番号だけでは、単に自宅から近いところを選んだり、リストの上から順番に電話をかけたりしなければ、必要な、自分に合った作業所が探せないということになります。そこでお伺いいたします。窓口において口頭での情報提供は行っているものの、判断基準となる基礎データが今述べたような少ない情報であれば、選択肢の幅を狭めてしまうと思われますが、御見解をお伺いいたします。
【答弁】山本健康福祉局長
現在、尼崎市内には60カ所近い小規模作業所があり、そこでは軽作業や創作的活動、日常生活におけるさまざまな訓練などが行われております。そのような小規模作業所へ通いたいといった障害者等からの相談に備え、小規模作業所の一覧表を作成し、御要望に応じて提供しているところでございますが、御指摘のとおり、現在の一覧表は必要最小限の情報のみを掲載するにとどめております。それは、各小規模作業所におきまして、例えばクッキーをつくる、販売するといったような取り組みが行われていても、ある作業所ではすべての過程で障害者自身が行っているもの、一方の作業所では、おおむねの過程を従事者や応援参加をしておられる保護者の手で行い、障害者自身は販売の一部を行っているというように、取り組み内容は作業所によって異なるため、画一的な表現で整理することによって、各作業所の思いや個性に関して誤解を与えてしまうのではないかとの考えがあり、必要最小限の情報を掲載し、口頭で説明を加え、内容を知っていただけるように対応してきたところでございますが、選択の幅を狭めている一面もあると認識しているところでございます。
【質問】障害者自立支援法によって、小規模作業所も社会福祉法人やNPO法人などの法人格を取得し、地域活動支援センターに移行することを求められています。今のところ、地域活動支援センターにも3つの型があり、一番小さい3型でも、その要件として10人以上の利用者が求められます。人数が不足している作業所は、利用者を募らなければなりません。作業をしたいという利用者のための情報提供という側面だけではなく、そのような作業所自体を支援するためにも、リストの情報を充実させることが必要であると考えます。名称、郵便番号、住所、電話番号、運営主体という情報提供の質、量を最低限にとどめるというやり方ではなく、幅広い情報を共有してもらい、多くの情報を持った上で選択するという情報提供の方法ができる仕組みづくりを行うべきではないでしょうか。情報提供の方法を改善することにより、作業所の透明性が増すことで、信頼性が向上します。また、その情報を定期的に更新することにより、できる限り新しく正確な情報を利用者に伝えることで、ミスマッチをなくし、利用者にとっても選択しやすい環境づくりを促進することができると考えます。必要な情報を提供することは、障害者自立支援法のねらいである働く意欲と能力のある障害者が働けるよう福祉側から支援していくという趣旨に沿った行政支援となるはずです。制度が流動的だからこそ、情報の鮮度管理、伝達をスムーズに行うことが必要であると考えます。
作業所での作業内容、送迎の有無、体験制の有無などの情報を追加すべきと考えますが、御見解をお伺いいたします。
【答弁】山本健康福祉局長
小規模作業所は、自宅から通所可能なところでの設置を基本として、広く障害者に利用してもらえるようにと、いわゆる事業所的に運営しているものと、例えば高等部を卒業した保護者などの有志でつくられた作業所で、限られた障害者を対象としているものなど、種々の形態がございます。しかしながら、現在、地域活動支援センターなど法内化への意向が図られようとする中では、各作業所におきましては、取り組みの拡大などが課題となっているところでもございます。そうしたことや障害者の利用の面からも、なるべくわかりやすく、かつ正確に情報が伝わるよう考慮すべきではないかと思っているところでございます。作業所での作業内容や送迎の有無などの情報掲載につきましては、申し上げてまいりました経過や課題を踏まえながら、それぞれの運営者から御意見や御協力をいただきつつ検討してまいりたいと考えております。
【質問】次に、若年就業支援事業の進捗についてお伺いします。
若年の失業者やフリーターの増加が、将来的に税や社会保障制度を支える力の希薄化や少子化につながるなど、社会問題に対する対策として、本市では、平成18年度から、若年者向けのキャリアカウンセリングを実施しています。そして、本年度から、より実効性を高めていくため、大学生等を対象にオリエンテーションセミナーと若年支援ワークショップを行って、若年就業支援を行っています。内容としてオリエンテーションとワークショップを行っており、オリエンテーション1回とセミナー5回をワンクールとして、年間2回実施することになっています。7月から8月にかけて第1回目が行われたという状況です。ことしの3月の予算議会の総括質疑で、私がこの事業についてお聞きしたところ、参加者の募集については、市報あまがさきやホームページでの掲載、ポスター、チラシ等の配布に加え、職業安定所、雇用対策協議会等の関係機関にも協力を得て、幅広く周知を呼びかけると御答弁がありました。では、お伺いいたしますが、第1クールの参加状況についてお答えください。また、そのうち市内在住者の割合はどのくらいであったのか、お答えください。また、この事業については、どのような指標に基づき事務事業評価を行おうとされているのか、お答えください。
【答弁】岩田産業経済局長
今年度から実施をいたしました若年就業支援事業のプレジョブスクールは、大学生等を中心に、若年層がフリーター等にならないための予防策として、意識改革や職業観を醸成することなどを目的としたものでございます。第1クールの参加状況でございますが、オリエンテーションセミナーでは104人の参加者があり、うち42人が市内在住もしくは在学の学生でございました。また、ワークショップでは、延べ5回で、参加者110人中14人でございました。なお、第2クールは、来年2月に実施を予定いたしております。
【質問】第1クールを終え、問題や課題はあったのでしょうか。また、それをどのように改善しようとお考えでしょうか。お答えください。
【答弁】岩田産業経済局長
御質問の課題と改善点はまだ十分には分析はできておりませんが、第1クール終了時に参加者に対しましてアンケートを行いました。その結果から申し上げますと、例えば自分の価値観に新しい発見があった、将来の目標が明確になった、あるいは将来に向かって自信が持てるようになったなどの意見が寄せられておりまして、一定の成果があったものと考えております。
しかしながら、先ほどお答え申し上げましたように、市内より市外の参加者が多く、事業の周知が第2クールの課題であると考えております。
次に、事務事業評価システムの成果指標についてでございますが、この事業が参加者の就労意識の向上を図ることを目的としていることから、今年度の指標といたしましては、参加者数を用いてまいりたいと考えております。
【質問】オリエンテーション以降のプログラムの内容として、自己分析から社会に出る必要性、不安や悩みの洗い出し、そして、それらを解決して就職活動に向けてみずから取り組めるようになるように、段階的にスキルアップを図るという取り組みを行うと案内文にありました。5回のワークショップを終えれば就業に直結するということではないと考えますが、行政にとっては、1回の運営でも2回の運営でも、受講者にとっては一度の受講で社会に出るためのスキルアップの機会となります。それゆえに、この事業を行った後の受講者のフォローシステムが重要であると考えます。その後のアフターフォローのシステムづくりについて、当局としてどのようにお考えか、お答えください。
【答弁】岩田産業経済局長
御指摘のとおり、こうした事業は、実施するだけではなく、参加者に対するその後の対応も非常に大切であると認識をいたしております。このため、第1クールのワークショップ終了後、振り返りワークショップ、こういったことを既に実施をいたしておりまして、参加者に再度目標を振り返り、今後どのように行動していくのかなど再認識する機会を設けたところでございます。今後とも就職まで意識を継続していくことが大切であることから、創意工夫を凝らしながら継続したフォローアップを実施してまいりたいと考えております。
【質問】免許外教科担任についてお伺いいたします。
先日、平成19年度の学力・生活実態調査の結果が報告されました。その報告によると、小学校の通過率は全国平均とほぼ同じ状況になってきています。しかし、中学校の結果は、全国平均をかなり下回っている状況です。教育委員会による今後の取り組みの方法として、3年間を見通した教育計画を見直すとともに、教員の意識改革を進めながら、全教科研究会や授業研究会などをさらに充実させ、授業改善に努めていく必要がある、また、学力向上施策については、中学校に対する施策の充実を図るとまとめられています。いずれにせよ、早急に中学校教育の抜本的な対策をとらなければなりません。なぜ本市の中学生の学力が年々低下しているのだろうかと調査していると、ふと免許外教科担任という言葉が目に入りました。一般的に聞きなれない言葉ですが、これは、ある教科の教諭が免許を持たない他の教科についても授業を担当するという仕組みです。例を挙げると、中学校の理科の教諭が数学の授業を教えるということです。日本の中学校や高等学校などの中等教育の学校では、原則として各教科ごとに教科担任が配置されることになっています。もちろんこれらの校種につく教員は、教科ごとに発行された教員免許状を持っており、その教科を専門とすることになっています。しかし、僻地などによる小規模校においては、ある教科についての免許状を有する教員を採用、配置することが困難な場合もあります。このため、当面の措置として、免許状の授与権者である都道府県教育委員会が校長及び当該教諭の申請によって、1年以内の期間に限り、当該教科の免許状を有しない教諭がこれを担任する免許外教科担任を許可できると、教育職員免許法の附則第2項に規定があります。
本市の免許外教科担任の状況について、過去5年間のデータを教育委員会から取り寄せました。そのデータによると、平成15年には免許外教科担任としての授業を行っている教師が19人いました。その後、平成16年には20人、17年には17人、18年は9人、19年は8人と、次第に減少してきています。このデータから、本市において免許外教科担任の問題は解消してきている状況です。そこで、3点お伺いいたします。
免許外教科担任の問題について、本市ではどのように考えているのか、また、免許外教科担任を本市で行わなければならない理由をお答えください。
【答弁】保田教育長
免許外教科担任につきましては、ある特定の教科の授業を担当すべき教員が不在の場合など、あくまでも例外的に認められる措置であると認識しております。こうした措置は、学級数に応じて各学校の教員数が決定されますことから、規模が小さい中学校では、教員の数が少なく、教科ごとの担当授業時数に過不足が生じるため、やむなく実施しているものでございます。
【質問】免許外教科担任の教師は、自分の専門以外に担当する教科の勉強や準備を別に行わなければならず、時間が不足する事態が起こることはないのか、また、その担当者の支援策はどうなっているのか、お答えください。
【答弁】保田教育長
やむを得ず免許外教科の担任を行う場合につきましては、生徒に対し確実な学習指導を行うことを前提に、あらかじめ担当学年や授業時間数、あるいは指導内容や方法に関し校内で十分に調整を行った上で、免許外教科担当教員に過度な負担がかからないよう実施することといたしております。
【質問】そして、今の状況に今後どのように対応していこうとお考えか、お答えください。
【答弁】保田教育長
これまでも免許教科に十分配慮した人事配置などに努めてまいりましたが、今後も引き続き免許外教科担任の解消に向け、努力をしてまいりたいと考えております。
【質問】現実問題として、免許外教科担任の制度を利用しなければ学校運営ができないという実態があるのは、ある一面やむを得ないかもしれません。さらに、教員の人事権は県教育委員会にあるため、人的支援が難しいということも理解できます。しかし、教育を受ける側である子供の身になれば、子供たちは教師を選ぶことはできません。免許外教科担任の問題が解消するまでの間にも授業は行われます。だからこそ、免許外教科担任の問題は早急に解消しなければなりません。また、学力向上を求めても、専門ではない教師が指導していては、効果的な授業のクオリティーを保つことに不安を覚えてもいたし方ない状況が生まれてしまいます。そのために教師が各専門の教科を教えることに集中することができる体制づくりを行い、各教師にプロフェッショナルとしての意識を強く求めるべきであります。教員1人であっても、その教員から指導を受ける生徒は、少なくとも1クラス30人以上いることになります。教科担任ですから、複数クラスを担当になりますので、今年度の8人の教師から教育を受ける生徒は一体どれくらいの人数になるのでしょうか。それを考えると、抜本的な改革、打開策を早急に打ち立てる必要性を感じます。
財政面や人事面での制約条件が大きい状況ですが、仕組みを工夫することで免許外教科担任の問題を解消できないでしょうか。例えば、一つの学校に配置されている教員を複数校を担当する形で配置することで、免許外教科担任を解消することはできないのでしょうか。御見解を伺います。
先日、平成20年度新規拡充検討事業(素案)が配布されました。学力向上の取り組みについても、新規拡充された事業が掲載されていますが、新しい施策を行うよりも、足元からまず見直すことが必要だということを指摘して、以上で私のすべての質問を終わります。
【答弁】保田教育長
中学校の教員数は、兵庫県教育委員会が公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律に基づき、各学校の学級数に応じて決定しています。したがいまして、それぞれの教員は各学校専任となるため、1人の教員が複数校の授業を担当することは、現行の制度上は困難であると考えます。したがいまして、必要な教科担任の採用等について県教育委員会に申し入れるなど、免許外教科担任の解消に向け、工夫を行っていく必要があると考えております。