2010年9月 第8回定例会 一般質問
【質問項目】
■公営住宅について


■公営住宅について
【質問】さきの6月議会で、周辺自治体の人口が震災前を上回る増加をしている中で、本市だけが人口減少をたどっており、それは都市経営の失敗、失策ではないかと指摘いたしました。我が国では、平成17年に自然増と自然減が逆転し、世界で初めて少子高齢・人口減少社会を迎え、今後は労働力の減少等による経済活力の低下を初め、子育てや高齢者の介護など社会不安の増大が懸念され、持続可能な社会の構築が大きな課題となってきています。
尼崎市の住まい・まちづくりにかかる課題の中で、尼崎市の高齢者人口は国、県と同様に増加傾向にあり、高齢化率は平成17年の19.7%から平成26年には25.3%になると予測される一方で、ゼロ歳から14歳の年少人口比率は減少傾向にあり、平成17年の13.1%から平成27年には12.1%になると予測されています。
また、平成20年5月に兵庫県企画県民部が公表した「兵庫県将来推計人口について」によると、尼崎市の2055年の人口は32万6,000人と想定され、2005年比で29.6%の減少となる一方、西宮市の2055年の人口は44万2,000人で、2005年比5.1%の減少にとどまっています。
隣接する同規模の自治体として、なぜ将来の人口推計がこれほど変わってくるのでしょうか。今後のまちづくりは、人口減少社会の中で、大阪という西日本最大の都市に隣接し、市域の高低差が少なく、コンパクトな都市としてのポテンシャルをいかに生かすかが重要であります。
先ほどの「推計人口について」に、都心部への集中化により、人口の偏在化が進むとの表記もあり、決して本市に魅力がないわけではなく、生かすための施策が展開されていないだけであると考えます。だからこそ、公営住宅については、単に住宅としてのハードの政策だけではなく、ソフト施策である社会福祉という両方の視点を持ち、今後のまちづくりを行っていくことが必要であると考えます。
質問に入る前に、今回なぜこの質問をこのタイミングで行うのか、問題意識の共有をしておきます。
まず第1に、住宅施策についての実施計画である住宅マスタープランの期限が平成13年から平成22年度までの10カ年とされており、改定の時期を迎えるためであります。
第2に、尼崎市行財政の健全化に係る市民会議が設置され、公営施設の見直しが検討されているためです。
第3に、市営住宅を中心に福祉施策に対する市民の不公平感が非常に高いため、この時期に整理すべきと考えるからであります。さて、順次お伺いしてまいります。
市営住宅の根拠は、昭和26年に制定された公営住宅法となっており、第1条に、「この法律は、国及び地方公共団体が協力して、健康で文化的な生活を営むに足りる住宅を整備し、これを住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸し、又は転貸することにより、国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与することを目的とする。」とあります。
そしてこの結果として、現在、市営住宅が6,859戸、改良住宅が3,321戸、コミュニティー住宅が380戸、再開発住宅が98戸、従前居住者用住宅が130戸、特定公共賃貸住宅が25戸の合計1万813戸が我が市には存在しています。そこでお伺いいたします。
本市には、現在1万813戸の公営住宅が立地していますが、この戸数設定の根拠をお示しください。また、この現在の戸数は適正であるとお考えでしょうか。御見解を示しください。

【答弁】衣笠都市整備局長
本市の市営住宅につきましては、昭和40年代から50年代にかけて多くの一般公営住宅を建設してきたところであり、それに加えて、特に本市の場合は住環境の改善が必要である地区において、改良住宅や当時の地域改善向け住宅なども多数建設してまいりました。さらに、平成7年の震災により、1,000戸を超える災害復興住宅の建設を行うなど、こうした一連の結果として現在1万813戸の管理戸数となっているものでございます。
市営住宅の適正戸数につきましては、一概に申し上げることの難しい面はございますが、現在の厳しい財政状況のもとにおいて、本市は他都市と比べて管理戸数が多く、今後の老朽化の進む市営住宅の更新・修繕経費等を考えるとき、見直していくべき課題ととらまえております。

【質問】次に家賃に関する問題についてであります。
これには民間借家の家賃よりも低額となっている家賃すら滞納するという問題と、所得が入居要件を超えているにもかかわらず入居し続けるという問題の2つがあります。
市営住宅の家賃は、1998年に改正された公営住宅法の規定によって設定されており、家賃は原則として入居世帯の所得階層に応じて設定される家賃算定基礎額に、立地係数、規模係数、経年係数、利便性係数の4つの係数を乗じて算定されます。
立地係数、規模係数、経年係数の3つについては、運営する地方自治体の裁量の余地はないものの、利便性係数は地方自治体が独自に設定できる係数で、住宅設備や自治体内の立地を考慮して、0.7から1.0の間で定めることが可能となっています。
市営住宅制度は、先ほども申したように、住宅に困窮する低額所得者に対し、低廉な家賃で賃貸することを目的としていることから、これに反した入居を是正するため、公営住宅法28条に収入超過者の認定、29条に高額所得者の退去義務について記載されています。
収入超過者とは、市営住宅に引き続き3年以上入居し、かつ政令で定める基準を超える収入を有する世帯が該当します。該当すると市営住宅を明け渡すよう努力する義務が発生し、基本家賃に割り増し賃料が加わることになります。また、高額所得者とは、市営住宅に引き続き5年以上入居し、かつ政令で定める基準を超える収入を有する世帯が該当します。家賃は近傍同種家賃となり、住宅明け渡しが義務づけられます。ここでお伺いいたします。
公営住宅法28条に該当する収入超過者の入居件数をお聞かせください。また、同29条に該当する高額所得者の入居件数をお聞かせください。

【答弁】衣笠都市整備局長
平成22年8月現在で、公営住宅法28条に規定する「当該公営住宅に引き続き3年以上入居している場合において政令で定める基準を超える収入のあるとき」に該当する、いわゆる明け渡し努力の対象者である収入超過者は1,015世帯でございます。また、同29条に規定する「当該公営住宅に引き続き5年以上入居している場合において最近2年間引き続き政令で定める基準を超える高額の収入のあるとき」に該当する、いわゆる明け渡し請求のできる対象者である高額所得者は32世帯でございます。

【質問】次に、家賃の滞納についてであります。
まず、本市の市営住宅等の使用料の滞納額の推移について過去5年分をお聞かせください。また、収納率についてもあわせてお聞かせください。

【答弁】衣笠都市整備局長
市営住宅等の使用料の滞納額は、平成17年度約3億8,600万円、18年度約4億円、19年度約4億3,500万円、20年度約4億6,400万円、21年度約5億7,600万円でございます。
また、収納率は平成17年度87.4%、18年度87.2%、19年度86.5%、20年度85.8%、21年度83.4%でございます。

【質問】次に移ります。時代が移り変わり社会のさまざまな物事が変化していくにつれ、既存の制度が制度疲労してきていると感じます。事例を挙げると、公営住宅に入るための申し込みがいつも抽選となるほど応募が多いことは皆さん御存じのことだと思います。しかし、担当者に話を伺うと、応募をして当選後に辞退する方がいらっしゃるということや、物件によって当選倍率が異なるということがあるそうです。公営住宅法の精神である住宅に困窮する低額所得者に対し、低廉な家賃で賃貸し、または転貸することにより、国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与するということの本質をいえば、住宅に困窮する低額所得者に対して、生活の安定を与えることを目的とすることに対して血税が投入されていると考えるのが自然で、居住する場所を選択する余裕があるということが果たして本当に住宅困窮の状態と言えるのでしょうか。生きていくために本当に懸命であるならば、どこでも新旧問わず、入居できれば一時的に市営住宅で過ごすことができれば将来につなげることができるというのが本質ではないでしょうか。不公平感が一番高いというのは、生活保護を受けながら公営住宅への入居を重複して受けることです。既に税の恩恵を受けている人がさらに税からの支出を受けることが、果たして平等な公的扶助のあり方と言えるのでしょうか。御見解をお聞かせください。

【答弁】衣笠都市整備局長
公営住宅の入居につきましては、公平性の観点から、公募により入居者を選考するものとされており、選考された世帯が一定の入居資格を満たす場合には入居を決定することとなります。また、公営住宅は、公営住宅法に基づき、住宅に困窮する低額所得者に対する住宅であり、その入居資格として所得等の制限がございます。
低額所得者とは生活基盤が脆弱な世帯であり、公営住宅法に定める収入が一定基準額以下の方でございます。生活保護法に規定する被保護者は、この低額所得者に含まれることから、公営住宅への入居に関しましては、法の趣旨に従い取り扱う必要があると考えております。

【質問】まず、戸数なんですけれども、私、ちょっといろいろと調べた中で、戸数の根拠って実は法的にはないんですね。人口規模であるとか面積に応じてとかそういうものではなく、時代を追って調べると、やっぱり歴史背景上、質のいい住宅が少なかったので、国が各自治体に対してどんどん建てなさいという、補助金も出しますよという形でずっと進んできた中で、一定規模、公営ではなく民間住宅がふえてきて、それがストップかかり、方向転換をしてきているというような今状況なんです。
戸数自体、見直しをぜひ進めるということでしたので、これを進めていただきたいと思います。
次に、収納率に関して徐々に下がってきているということで、指定管理者が平成19年から入りながら管理をしているので、ここにもう少し指導するなりして、不公平感が出ないようにしていただきたい。また、1,015世帯ということは1万800戸ありますので、約10%の世帯が収入超過という形になっています。この10%が退去してもらえたら、その1,015世帯が新しく今市営住宅を求めるような水準となっている、資格要件がありながら入れない人たちにあてがうことができるという形になりますので、機会の平等ということを感じて、お願いします。
では、次に入っていきます。
公営住宅の制度と生活保護の制度は、先ほども答弁ありましたように別々の制度で運営をされていますので、法的には問題ありません。しかし、ここで私が問題意識として思っていることは、生活保護の住宅扶助を受けることができる方が市営住宅に居住することにより、生活保護を受けず住宅困窮に陥っている方が入居できないということになります。だからこそ1問目で、平等な公的扶助のあり方と言えるのかと問うたのです。機会の平等を担保することが行政としての役割に入っていないのでしょうか。
平成21年9月現在の市営住宅における生活保護入居者の入居率は15.1%となっており、約2億8,400万円が生活保護制度の住宅扶助で市営住宅の家賃として支払われています。それだけ多くの税金が支払われている中で、そのとき公営住宅への入居を求める方だけでなく、将来的に公営住宅を希望する方や、制度を税によって支えている方々の不公平感をなくし、納得してもらうことが今後の制度存続のために必要と考えます。
そこでお伺いいたします。一方は他の公的扶助を受け、一方は公的扶助を受けていない、そのような不公平感をなくすために、市営住宅の募集に生活保護優先枠を設け、一般の方と応募を区分するような仕組みについて御見解を求めます。

【答弁】衣笠都市整備局長
先ほどもお答えしましたとおり、生活保護法に規定する被保護者は、公営住宅法に定める入居資格を備えていることから、生活保護法に規定する被保護者を特別に区分して募集するといった仕組みとすることについては考えておりません。

【質問】本市の世帯数20万8,635戸に対し、市営住宅管理戸数は1万813戸で、世帯数に占める公営住宅は5.1%になっており、西宮市の4.6%、芦屋市の4.08%、伊丹市の2.49%、宝塚市の1.51%、川西市の1.55%と、近隣都市と比較しても本市は市営住宅の割合が高いということがわかります。また、全国の類似自治体の世帯に占める公営住宅の割合を調べてみると、大半が0.49から2.63%間で分布しており、鹿児島市が4.16%と突出しているような状況で、阪神間は全国的に見ても市営住宅の割合が非常に高いと言えます。
一方、尼崎市内の住宅総数は平成20年時点で23万6,580戸となっており、そのうち空き家は3万7,690戸となっています。全住宅中15.9%が空き家となっているということになります。これは西宮市の9.7%、芦屋市の10.2%、伊丹市の10.8%に比べ、突出して高い状況になっています。
また、市営住宅の維持管理費用を3カ年見てみると、平成18年が18億1,606万円、19年度が14億7,996万円、20年度が16億9,230万円と多額の費用がかかっています。また、建設費も過去10年で2億円から22億円程度が各年度支出されており、今後順次建てかえが必要な年限を迎える住宅がふえることから、今後も多額の支出が予想されます。
以上を踏まえた上でもう一度お伺いいたします。現在の市営住宅数は、本当に果たして適正なのでしょうか、お答えください。
本市は現在、非常に緊迫した財政状況となっています。市営住宅も公営住宅であります。現在の財政状況と将来推計をもとに、適正戸数が何戸であるか、そして今後どのように建てかえを行っていくか明確にし、計画を立てることが必要と考えますが、当局の見解を求めます。
今お聞きしたのは、これまでたびたび質問を行っているアセットマネジメントのことであります。施設の設計から建設、修繕、建てかえまでのライフサイクルを一貫した一体管理を行っていくという視点を持つことが重要であります。
本市は、これまで莫大な投資を行うことで、一定の基盤整備を達成することができました。しかし、その一方で、負債残高は大きく膨らみました。今後は、将来世代に過大な負担をかけないように、中期的な財政見通しを踏まえ、過度な借金に頼らない、財政力に見合った身の丈の財政運営へと明確にかじを切ることが求められます。まじめに税負担を担っている市民の皆さんに対してしっかり説明責任を果たし、持続可能な自治体経営を推進することを要望し、私のすべての質問を終わります。

【答弁】衣笠都市整備局長
先ほども御答弁いたしましたように、本市におきましては、これまで公営住宅のほか、改良住宅や災害復興住宅など多くの市営住宅を建設してきた経緯もございまして、他都市と比べて管理戸数が多い状況であります。
本市にとりましては、現在の厳しい財政状況のもと、老朽化の進む市営住宅の更新・修繕経費等考えますとき、見直すべき課題ととらえております。現在、住宅マスタープラン改訂検討会議の中で、老朽化した市営住宅の整備のあり方とともに、市営住宅の適正な管理戸数のあり方についても議論しているところであり、適正戸数につきましては、維持管理経費なども考慮しつつ、将来的な需要と供給のバランス、民間住宅の空き家状況なども見きわめながら検討してまいりたいと考えております。

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